「感謝と貢献」第689日
『生き方働き方創造』
「現場のドラッカー」國貞克則著(角川新書)より抜粋
「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。」
“Business enterprises -and publicーservice institutions as well- are organ of society”
「マネジメントをするならドラッカーだけは読んでおけ」と言われる優秀な経営者は多い。しかし、ドラッカーの著作を読んでドラッカー経営学を理解するのはなかなか骨が折れます。私も初めのころは、何か哲学書のような感じで、ドラッカーが何を言いたいのかよくわかりませんでした。ただ、ドラッカー経営学の全体像とその基本的な考え方が理解できてから思うのは、ドラッカー経営学は次の2つの事がわかっいていないと理解できないだろうということです。
一つ目は、ドラッカーは生涯にわたって「人間はどうすれば幸せになるか」という「人間の幸せ」について考えていた人だということです。逆にこのことがわかれば、ドラッカー
の40冊に及ぶ著作の執筆テーマの変遷も、手に取るようにわかってくると思います。
二つ目は、ドラッカーは社会を生き物として見ていたということです。ドラッカーは自分自身のことを社会生態学者と呼んでいました。社会は生き物です。これは言われて
みれば当たり前のことです。廃墟を社会とは言いません。ビルが集まっているところを社会とは言いません。人が集まっているところを社会と言います。そういう観点で言えば社会は生き物です。社会は生き物であり、その構成要素の一つが組織なのです。
(中略)
『【エッセンシャル版】マネジメント』の本文の第一行は、次のような言葉から始まります。
「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。」
この文章の原文は“Business enterprises -and publicーservice institutions as well- are organ of society”です
私は、ドラッカーが「組織」のことをあえて“Organ”という単語を使って説明していることを知って、初めてドラッカーの考え方が少しわかった様な気がました。
“Organ”とは肺とか心臓などの人体を構成する「器官」のことです。人間という生き物は、肺とか心臓なだの一つひとつの器官が集まって出来ています。
この生き物を構成する一つひとつの器官の目的は、その器官の中にはありません。肺の目的は肺の中にはありません。肺の目的は人体に酸素を供給することです。
心臓の目的は心臓の中にはありません。心臓の目的は人体に血液を循環させることです。
社会は生き物です。みなさんが所属する会社などの組織が集まって、この社会ができあがっています。その生き物である社会を構成する一つひとつの組織の目的も
組織の中にはありません。病院の目的は病院の中にはありません。病院は医師や看護師のためにあるものではありません。病院の外にいる患者さんの病院を治すことが
病院の目的です。消防署の目的は消防署の中にはありません。消防署の外の火事を消すことが消防署の目的です。
では、同じ社会の構成要素の一つである民間企業だけが、その目的が企業の中の「利益をあげる」ということでしょうか。そうであるはずがありません。企業の目的も
企業の外にあります。すべての組織は社会に貢献する役割を担っているのです。
このように説明すると、「企業は利益をあげ税金を納めることによって社会に貢献している」という人もいるでしょう。確かに、企業が利益をあげ税金を納めることは極めて
重要です。しかし、それは企業の貢献のほんの一部でしかありません。企業は自らが提供する商品やサービスによって、社会やコミュニティや個人に貢献するために存在
するのです。組織は組織自体のために存在するのではありません。
みなさんは自分のことしか考えていない人と付き合いたいですか。そうではないでしょう。同様に、自分の会社の売上や利益のことしか考えていない自己本位の会社と
付き合いたいですか。会社のホームページには「顧客第一主義」などと書いてあっても、社内の会議に参加してみると、自分の売上や利益の事しか議論していない会社
は山ほどあります。不祥事を起こす会社は内向きです。自分の会社の売上や利益ことを第一に考えているからうまくいかないのです。