信用信頼の価値交換・交流の流通循環を自律分散「協同創造」事業体起点で形成・変化成長いくことができるように、金融の勉強

信用信頼の価値交換・交流の流通循環を自律分散「協同創造」事業体起点で形成・変化成長いくことができるように、金融の勉強

日本銀行での金融研究所、国際局、国際決済銀行(BIS)などを経て、麗澤経済大学経済学部教授。決済分野を代表とする有識者として、金融庁や全銀ネットの審議会等にも数多く参加されている中島真志氏。

これからの金融に関すること。ビットコイン、リブラの真相など。仮想通貨からブロックチェーン(分散型台帳)、デジタル通貨のことが非常にわかりやすく理解できる良書だと思います。

 

この本のおわりにでの文を下記に抜粋

出版記念講演会されたYouTube動画もあります。

youtu.be

 

おわりに

あれは、仮想通貨という存在がまだ世の中に広く知られる前、2013年の秋のことだったと思います。ある国際会議に出席したところ、会議の片隅の目立たないスペースで「仮想通貨」に関する小さなセッションが行われていました。まだ30代と思われるブロンド髪で青い目の若い米国人の男性が、熱弁をふるっていました。「ビットコイン協会」の代表というその人は、ビットコインの仕組みについて一通り説明した後、「これは『通貨』ではなく、『価値移動のための仕組み』なのだ」と締めくくりました。

「仮想通貨なのに、通貨でないとは一体どういうことだ?」「価値移動の手段ってどういうことだ?」と頭の中で疑問符でいっぱいになりました。これが、筆者と「ビットコイン」、そしてそれを支える技術である「ブロックチェーン」との出会いでした。そこから、仮想通貨、ブロックチェーンアルトコイン、ステーブルコイン、リブラ、中銀デジタル通貨などに続く研究の長い道のりを辿ることになりました。

 さて、中央銀行などがデジタル通貨の発行へ乗り出そうとしている現在は、かつて金属の貨幣が紙幣に変わっていった時期によく似ているような気がしています。日本でいえば、明治時代でしょうか。本来は、金貨や銀貨が「おカネ」なのですが、重くて持ち運びに不便なため、軽くて利用に便利な紙幣が使われるようになりました。でも、紙にそれだけの価値を認めるのは不安だったので、「兌換紙幣」という仕組みがとられました。これは、発行した紙幣と同額の金や銀を中央銀行保有して、紙幣と一定の金や銀との交換を保証するという仕組みです。つまり、あくまでも、本物のおカネは「金」や「銀」なのだけれど、その代わりに使いやすい紙幣を使うことにしよう。でも、必要な時には、いつでも金や銀に戻すことができるようにしよう、ということです。こうした「兌換」という仕組みによって、人々は、価値の裏付けとなる金や銀があることを前提に、紙幣の価値を信じて使うようになりました。

 現在、民間企業、民間銀行、中央銀行の3者が同時進行で進めている「デジタル通貨」に向けた動きも、筆者には、上記の兌換紙幣の仕組みと本質的にはほとんど同じように見えます。発行するデジタル通貨と同額の法定通貨を発行主体が支払い準備として持つことによって、皆がデジタル通貨を信頼して使えるようにしようとしています。あくまでも、本物のおカネは「法定通貨」なのだけれど、その代わりに使いやすい「デジタル通貨」を使うことにしよう。でも、必要な時には、いつでも法定通貨に戻すことができるようにしよう。そのうえで、従来の仕組みでは、移動させるのに手間とコストがかかっていた法定通貨のかわりに、ブロックチェーン上で、トークン化したデジタル通貨をサクサクと動かすことにしようとしているのです。ブロックチェーン技術を使えば、法定通貨の代わりに、トークン化した通貨で決済を行った方が、便利で安上がりになるということでしょう。デジタル通貨は、一種の「デジタル兌換通貨」としての役割を果たそうとしているのかもしれません。