【交換モデルX】 幻冬舎GOLD ONLINE記事 「オードリー・タン…影響を受けた柄谷行人の「交換モデルX」
『生き方働き方創造』
【交換モデルX】
幻冬舎GOLD ONLINE記事
「オードリー・タン…影響を受けた柄谷行人の「交換モデルX」からの文を以下抜粋
柄谷さんが言っている交換モデルXとは、
家庭のような無償の関係の交換モデルA、上司と部下のような上下関係のB、政府内部あるいは不特定多数の人たちが対価で交換する市場のような関係のC、これら三種類に属さない四つ目の交換モデルを指しています。これは開放的な方法で、不特定多数の人々を対象としつつ、「家族のように何か手伝いを必要とすれば、見返りを求めずに助ける」という交換モデル
(中略)
私は柄谷さんに、「イーサリアムやビットコインのように世界中の不特定多数の人々が組織化し、そのプラットフォーム上で交換が行われる暗号通貨などのような新しい分散型交換モデルは、交換モデルXの実現と捉えてよいのか」と尋ねました。これについて柄谷さんは、地域通貨や自分が考えている通貨発行のシステムなどを交えて答えてくださいました。
つまり、こうした分散型の方向に進むことは決して悪いことではないけれど、相互信頼がない知らない人同士の交換システムの場合、基本的なシステムについてどのように信頼を得ていくかが重要な問題の一つになるというのです。
交換システムに参加する人たちがお互いに顔見知りで、少なくとも誰かの推薦で参加するのであれば、先ほど述べた「家族」という考え方を拡大すればいいのですが、知らない人との交換では「どのようにして信頼を担保するか」を解決しなければならないのです。
市場であれば、これは問題になりません。「交換が自由である」ということだけで、対等性も等価性も必要ないからです。
私が問題にしているのは、知識の交換のようなケースです。私が知識を誰かとシェアしたからといって、私の知識が失われるわけではありません。これは事実上、独占権のない無償の交換モデルですが、この場合、「私の知識をシェアした人が、その知識を用いて私の望まないことを行わない」という信頼関係が必要
(中略)
交換モデルXの概念は、「みんなとシェアする過程で、あらゆる人とお互いの信頼関係を築いていく」というものです。一般的には「まず相互の信頼を得てからシェアをする」という順番ですから、ベクトルは正反対です。
たとえば、百科事典の制作は、まず編集されてから出版されるという順番でしたが、ウィキペディアは先に内容を公開し、その内容に意見のある人があとから加筆修正などの編集を加えていくというスタイルです。これまでのやり方とはベクトルが逆転しているわけです。
(中略)
デジタル上で交換モデルXが実現することがわかれば、それを現実の政治面に応用することができるかもしれません。それが実現すれば、資源をめぐる争いもなくなる可能性があります。その先には、「公共の利益」というものを核として、資本主義に縛られない新しい民主主義が誕生するかもしれません。デジタル空間とは、そのような「未来のあらゆる可能性を考えるための実験場所」ではないかと私は思っています。
オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)