「感謝と貢献」第609日

『生き方働き方創造』

「民主主義のための社会保障」著)香取照幸氏 東洋経済新報社

約40年の厚生労働省キャリアの経験と社会保障の全体網羅する深い見識からの学び多かった。

社会課題を社会的創造(結合・融合・統合)組織マネジメントという観点で解決していくことの有効性が確信できた

 

著書より下記抜粋

社会保障の基本的機能

社会保障制度は、産業資本主義の誕生後、近現代社会で形作られた制度です。近現代社会の特徴は、個人の自由と自立を基本とする市民社会、市民一人一人の自由な活動・自己実現が社会の発展を支える社会ということです。

 前著(『教養としての社会保障東洋経済新報社、2017年)でも申し上げましたが、社会保障の最も大事な機能は、市民が直面する様々な生活上のリスクを社会連帯の仕組みを通じて軽減することで市民が貧困や生活困窮に陥ることを防ぎ(=防貧)、社会の安定を図る(=民生の安定)とともに、市民一人一人が思い切って自分の可能性に挑戦できるようにすること、すなわち「市民の自己実現への営為」を支えることにあります。このことは、社会保障のもう一つの重要な機能である「社会の持続的な発展に寄与する」ことに繋がります。

 社会経済の発展の源泉は構成員一人ひとりの「活力」です。その総和(Σ)が社会の活力であり、社会が発展していく原動力になります。社会が生み出す富=付加価値の分配が歪めば、富は一部の人に集中していき、社会はより豊かになっていくひと握りの人たちといつまでも貧困に喘ぐ人たちに二極化し、社会を支える真ん中の層がいなくなります。所詮、この世の中は不公平だ、不公正だ、フェアじゃない、と多くの人が感じている社会、一人ひとりの努力が正当に報われると思えない社会、貧困の差が固定し拡大していく社会に人々は正統性を感じることができなくなり、社会への信任は失われます。誰も真面目に働かない、バカバカしい、何をやっても報われない、となったら誰も努力しなくなって社会は停滞し、法律やルールも守られなくなって治安も悪化します。

「支える人のいない社会」は停滞し、不安定化していきます。

社会保障は、「防貧」の機能によって社会の中核を担う中間層の崩壊を防ぎ、所得再分配を通じて経済成長の果実を広く国民に 分配することで国民の生活の安心を支え、彼らの安定的な消費によってさらなる経済成長を実現します。実際、第二次世界大戦の欧州諸国の経済発展は社会保障の充実と軌を一にしていましたし、日本の高度成長もまた同じような形で実現されました。

 

 

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