日本経済新聞記事 京セラ 小集団「アメーバ」を再定義

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日本経済新聞記事 2022年3月9日記事より

「アメーバの位置づけを見直さなければならない。」

「生産性倍増」を経営目標に掲げる京セラ谷本秀夫社長はこう話す。

(中略)

少人数の集団で採算管理し生産性を高めるというアメーバの理念を生産現場の現状に合わせて見直す必要が出てきた。

(中略)

京セラの工場では従業員たちが自身が生み出す利益を常に意識する。10人単位で組織するアメーバ間で仕掛製品が次の工程にわたると社内売買があったとみなされる。受け取ったアメーバは自らの工程を進めて次のアメーバに「売る」。

 アメーバの売上高から人件費を除いた経費などを差し引き、メンバーの労働時間で割った「生産性」を示す指標が「時間当たり採算」。計画に対してどの程度の付加価値を生み出したか確認でき、従業員に経営者意識を持たせる仕組みだ。京セラ本社だけでアメーバ数は3000にも及ぶ。

 ところが、全自動化ラインでは10人規模のアメーバには「売上高を増やしてコストを減らす」という目標設定が難しくなる。谷本社長は「アメーバを仕事を前向きに進めるためのチームという位置づけに変える必要がある」と打ち明ける。

 例えば、1970~90年代の成長期に決められたルールを変えたり、長年変わっていない生産プロセスの変革などを10人単位のアメーバから生み出せたりするような仕組みを検討する。谷本社長は「10人単位でフラットに話し合って提案してもらう」と話す

 人材異動容易に

さらにアメーバの肥大化にもメスを入れる考えだ。少品種の製品を大量生産する電子部品などの部門では会社が大きくなったことで100人単位のアメーバも誕生し、少人数で従業員に経営意識を持たせるアメーバ経営の目的にそぐわない部門も出てきている。

 京セラは2021年にグループ全体の組織を大幅に見直し、電子部品など3つの事業セグメントに再編。それぞれに担当取締役を置いて人事権などの裁量を与えた。人材を異動しやすくし、事業部の壁を越えた交流をしやすくする狙いがある。

アメーバ経営は採算意識を持たせることに成功した一方で、事業ごとの壁が高くなるという弊害も生んだ。違う事業部で同じような工程を導入するのにノウハウが共有されず別々に生産システムを立ち上げるなどの無駄も生まれた。

 ロボ工場で生産性を高める一方、アメーバという経営手法をどう現状に合わせて成長につなげるのか。京セラ自身も転機を迎えている。