「完全性と全体性」の解説から生き方働き方のヒント

ユングの生涯」河合隼雄著からの抜粋

ユングのよく言う「人格の全体性」

ユングは人間の心の光の部分のみではなく、影の部分をも含む全体としてこそ、

その存在の意味があることを強調する。

(中略)

完全性は欠点を排除することによって達成されると考えられるが、

全体性はむしろ欠点を受け容れることによって、そこに生じる統合を目標としようとする。

この際、完全性は多くの人にとって共通の目標を提供するが、

全体性の方は、ある個人がその影の部分を受け容れることによって

達成されるものであるために、そこには各人の個性が強く関係してきて、

万人共通の目標やモデルを与えてはくれない。

ユングが“個性化”という言葉を用いるのもこのためである。

(中略)

この世のどこかに完全な人が存在し、それに従ってゆくという考えを拒否することは淋しいことだ。われわれは依存への道が断たれた淋しさを味わう。

思えば、個性化の過程がいかに孤独を強いるものであるかは、ユングがしばしば指摘しているところである。